Project Hospital
久々の更新ですが今回はゲームの紹介です。
病院経営シミュレーションゲーム"Project Hospital"
https://store.steampowered.com/app/868360/Project_Hospital/
(steamに飛びます)
出会ったきっかけはニコニコのこの動画です。既にご存知の方もひょっとしたら居らっしゃるかもしれません。
一目見た時点で「これは」と思い、動画を見終えた足でそのまま購入し、遊び続けて今に至ります。
遊ぶ過程でWikiを調べるも英語Wikiですら記載がほぼなく、プレイ人口の少なさが察せられました。
これだけ面白いのにプレイヤーがいない…そうなると布教したくなるのが人の常。
上記のプレイ動画ではさほど突っ込んでいない、ゲームとしての特色部分を浮き彫りにしてプレイヤーを増やそうというのが本記事の目的となります。
・ゲーム概要
まずどういうゲームなのかという点ですが、最初に述べた通りこれは病院経営のシミュレーションゲームです。
メインの流れは「利益を確保して病院を増改築し、さらなる利益を追求する」ことになります。
シムシティと同様の拡大再生産系シミュレーションと言えるかもしれません…というかこの部分だけ切り出したら、スケールと舞台が違うだけでシムシティと大差ないといえます。
「元手を消費(あるいは借金)して施設を増強⇒得た資金でランニングコストを賄いつつ余剰資金で更に施設を追加⇒拡大の程度に応じて自由度と施設がアンロックされていく」という流れ、シムシティの経験がある人なら脳内に道路が引かれて住宅・工場・商業施設と各種インフラが建っていることと思います。
このゲームも道の代わりに待合室を、インフラの代わりに診察室を、税収の代わりに保険収入を得ているのでゲームの基本メカニクスは同じです。
正直知名度的にはシムシティの方が上ですし、発展する規模の大きさや施設の豊富さという点ではProject Hospitalは及ぶべくもありません。
ですが私はこのゲームを気に入り、恐らくシムシティ以上の時間を溶かしています。
理由は以下の3点です。
①個人の所持技能の影響が大きい
シムシティにおいては人口のスケールは最終的に100万人クラスであり、massとしての「人々」は存在しますが、その内訳はさほど細分化されていません。
統計データで教育の程度や年齢などを見たりできますし、最近の作品では特定の人物を追跡することもできますが、ある一人の市民が持つ影響度を実感するには微小すぎるのが実情です。
100万人都市を作ることもできるゲームでそこまでこだわっても煩雑なだけというのが実際のところかと思われますが、シムシティでは集団が個人に先立ちます。
対してProject Hospitalでは、雇用できる従業員の最大値は250人で固定されています。
したがって1人あたりの寄与度が大きく、町医者レベルの診療所であれば最低限の設備と医者が1人いれば回していくことが可能です。
診療効率を上げたければ新たに医者を、入院設備を整えるには看護師を、検査を充実させるなら技師を…といった流れで設備とスタッフを増強していくのが基本構造ですが、全ての人材には保有スキルが設定されています。
総合医学スキル45%と診断スキルを19%しか持たない研修医では診断効率も精度もイマイチなので、1日の診療人数も伸びませんし時折誤診で病院の評価がマイナスされるイベントも発生します。
それに比べると総合医学スキル99%、診断能力100%に加え、専門分野スキルを持つベテランドクターでは診療効率が段違いですし、診断に悩む難しい症例で「鑑別診断」コマンドを使用できるなど、圧倒的実力を見せつけます。
また、外科医なら手術スキルを持っていないと手術の選択肢が選べませんし、術者はいても麻酔スキルを持つ医者や手術補助スキルを持つ看護師が居なければやはり手術はできません。
レントゲンやMRIを取るにしても、それに対応したスキルを持つ技師を雇う必要があります。
そしてどの職種でも、高い技能を持つ人材は高い給与が必要なので、序盤の金策が苦しい時期にはその部分での取捨選択が要求されます。
夜間帯の人員も最序盤以外は必要になるので、どこにどのレベルの人員を配置するかを考えるのが醍醐味ということになります。
②1人1人の診療に介入できる
これが個人的に最もツボに入ったメカニクスです。
例を出しましょう。
嘔吐を訴える患者が来院しました。
最上段には候補となる病名が羅列されていますが、いずれも確度は2%で、診察や検査を追加しないと絞り込めそうにありません。
放っておいてもAIが勝手に診断してくれますが、マニュアルで診療することもできます。
まずは患者の話を聞き、各種診察を行うこととしました。
これで新しい所見が得られれば、それを手掛かりに追加の検査を行おうという計画です。
…なんと身体診察だけで急性虫垂炎(盲腸)の診断に辿り着きました。
本当はこの後超音波とかCTに進むつもりだったんですが、
総合医学100%という化け物が100%虫垂炎だと言うのですからこれはもう虫垂炎です。
もし胆嚢や腎臓に石を見つけたり、腹の中にあるはずの無い空気を見つけてしまったとしても虫垂炎です。そういう世界です。
冗談はさておき、このように自ら診療計画を組み立てることが出来る点がこのゲームをただのシミュレーションに堕さしめない特徴だと思います。
今回はたまたまメジャーな疾患でしたが、ライム病、猫ひっかき病、炭疽、肺嚢胞線維症などややマニアックな疾患も幅広く揃っています。
「そんなわけの分からない病気をマニュアルで進められるはずないだろ!」という声が聞こえてきそうですが、病名や検査・治療にマウスオーバーすることで解説ポップが表示されるので、それらをヒントに進めることは十分可能です。
仮に分からなくとも、仕様上診断・治療できない科の患者はやってこないため、可能な検査を全て行えば診断は下ります。
優しい世界。(経営には優しくない)
③設備のコピペが優秀
診察室や検査室には最低限必要な設備がそれぞれ設定されています。
PC、診察台、ライト、医療用ごみ箱、手洗い場などなど。
スペースは有限ですのである程度見栄えよく、それでいてコンパクトに配置する必要があるのですが、例えば同じ規格の診察室を複数並べたい場合に一々手動で並べていくのを想像すると、ごく一部のプレイヤーは喜ぶかもしれませんが、まあゾッとします。
このゲームは既存の施設を指定した範囲で簡単にコピペすることが出来るので、連続していくつも同じ施設を並べることができます。
これを
こうじゃ。
設備は備品以外にも床のデザインや壁の模様までデザインできるのですが、このコピペ機能ではそれらも一式丸ごと写してくれるので、診療科ごとに色分けしている場合でも毎回塗りなおすといった作業は不要です。
もちろん選択範囲を狭めて、病室のベッドだけ増やすということも可能。
「最初から診察室設計するのよく分かんないし面倒なんだけど…」という人のためにも、最初からお洒落な診察室や待合室といったセットが登録されていますので、効率を追求しないならこのセットを並べるだけでかなり素敵な病院にできると思われます。
総評
シムシティに似たゲームデザインでありながら、個人レベルの存在感が大きく、プレイヤーが直接診療することで超本格的お医者さんごっこができ、UIも優秀という部分が大きな推薦ポイントです。
細かく言えば麻酔科医や手術の流れが細かく描写されている(グロくはない)、医療用ゴミ箱のデザインがリアル、経営のために職員のホスピタリティを真っ先に削る自分に気づいてヘコむ、職員が必ず定時で帰宅するので拡張型心筋症で死にそうな患者が歩いて帰宅するなど様々な点で推したい(ツッコミたい)部分はありますが、書いている人の主観が多分に混入するため今回は選外となりました。
現在steamで2570円。
安いと感じるか高いと感じるかは人それぞれですが、シミュレーションゲームと、業務のフロー改善のような内政要素が好きな人には強くお勧めできる作品かと思います。
備品の設置関連がやや分かりにくいので躓く点もそこそこあるのですが、需要があればそちらの解説記事も別途書きます。
この記事を読んだ方の積みゲーが1つ増えれば望外の喜びです。
ご高配のほどよろしくお願い申し上げます。