「最悪」の医療の歴史

 

「最悪」の医療の歴史

「最悪」の医療の歴史

 

 

古くはバビロニアから、新しきは中世にかけて、医療という名目で何が行われてきたのかを拾い集めたエピソード集です。

今の常識からすると「何故そんなことを…」と突っ込みたくなる事例が満載ですが、当時の人々は大真面目だったものと思われます。

後半、17世紀くらいまで近くなってもまだ凄まじい案件が出てくると、「これは当時の主流じゃ無かったんだよな…?」という祈りにも似た気持ちが湧いてきます。

以下にいくつか紹介します。

 

バビロニアでは、病は患者のこれまでの行いが悪霊や呪いといった形で表れるものと考えられており、医者とシャーマンはほとんど同義であった。治療法は呪文を唱えたり薬草を混ぜる他、豚の糞を首に巻いたりヒト頭蓋骨にキスをするといったものがあった。

 

古代ギリシアでは痔と精神の関係があると思われており、特に失恋や鬱病の治療を目的として痔の切開が行われていた。やり方は押さえつけて熱した鉄片で焼く。

 

古代ローマでは歯痛に対してネズミの死骸を口に突っ込んだり、カバの歯をこすりつけたりしていた。

 

・七世紀頃、恋の病を治療するために、男の口に愛する女性の経血を含んだ布きれを押し込んだ。

 

瀉血ルネッサンス期頃には最高の医療の一つと認識されており、イングランド王チャールズ2世は1040ccの血液を抜かれ、熱した鉄棒で突かれたり鳩の糞を塗られるなどして数日後死亡。

 

・16世紀頃のドイツなどでは、ヒトの死体を用いて薬にすることは最先端であり、死体の需要は高かった。真っ先に新鮮な死体に触れられる死刑執行人は人気が高く、国家資格として試験も課されていた。また、処刑や解剖はショーとしての側面も強く、観客の集まりはすこぶる良かった。

 

 

読んでいて中々ゾッとする本です。

よくぞ現在の水準まで進歩したなと思いました。

今の医療は個人レベルの医師の経験ではなく、より広い視野で症例を集め、統計的に有効かそうでないかを判断するEBM(Evidence Based Medicine)に根ざしていますから、なかなかこれらに匹敵する代物がまかり通ることは無い、はず。

 

ちなみに読んでいて一番笑ったのはこちらです。

 

・武器軟膏

17世紀、決闘などで生じた武器による外傷に用いられたもの。

原材料は絞首刑に処されて間もない泥棒の頭蓋骨に生えた苔。

これを、「傷を作った武器」に塗る。勘違いしてはいけない。傷に塗るのではない。武器に塗る。

 

読んでて「何でそっちやねん」て吹き出しました。事実は小説より奇なりとはよくぞ言ったものです。こんなもの、現代人の想像の域を超えています。

ちなみにこの話には続きがありまして、「お前が斬った敵を助けるために武器を貸してくれ!」と持ちかけるのは図々しいし無理があると考えた当時の医者は、「木製のレプリカでも良かろう」と妥協したそうです。

どっとおはらい。

 

人類、案外馬鹿なんだなと疲れた笑いが欲しい時においかが?