Project Hospital

久々の更新ですが今回はゲームの紹介です。

 

病院経営シミュレーションゲーム"Project Hospital"

https://store.steampowered.com/app/868360/Project_Hospital/

(steamに飛びます)

 

出会ったきっかけはニコニコのこの動画です。既にご存知の方もひょっとしたら居らっしゃるかもしれません。

一目見た時点で「これは」と思い、動画を見終えた足でそのまま購入し、遊び続けて今に至ります。

遊ぶ過程でWikiを調べるも英語Wikiですら記載がほぼなく、プレイ人口の少なさが察せられました。

これだけ面白いのにプレイヤーがいない…そうなると布教したくなるのが人の常。

上記のプレイ動画ではさほど突っ込んでいない、ゲームとしての特色部分を浮き彫りにしてプレイヤーを増やそうというのが本記事の目的となります。

 

・ゲーム概要

まずどういうゲームなのかという点ですが、最初に述べた通りこれは病院経営のシミュレーションゲームです。

メインの流れは「利益を確保して病院を増改築し、さらなる利益を追求する」ことになります。

シムシティと同様の拡大再生産系シミュレーションと言えるかもしれません…というかこの部分だけ切り出したら、スケールと舞台が違うだけでシムシティと大差ないといえます。

「元手を消費(あるいは借金)して施設を増強⇒得た資金でランニングコストを賄いつつ余剰資金で更に施設を追加⇒拡大の程度に応じて自由度と施設がアンロックされていく」という流れ、シムシティの経験がある人なら脳内に道路が引かれて住宅・工場・商業施設と各種インフラが建っていることと思います。

このゲームも道の代わりに待合室を、インフラの代わりに診察室を、税収の代わりに保険収入を得ているのでゲームの基本メカニクスは同じです。

正直知名度的にはシムシティの方が上ですし、発展する規模の大きさや施設の豊富さという点ではProject Hospitalは及ぶべくもありません。

ですが私はこのゲームを気に入り、恐らくシムシティ以上の時間を溶かしています。

理由は以下の3点です。

 

①個人の所持技能の影響が大きい

シムシティにおいては人口のスケールは最終的に100万人クラスであり、massとしての「人々」は存在しますが、その内訳はさほど細分化されていません。

統計データで教育の程度や年齢などを見たりできますし、最近の作品では特定の人物を追跡することもできますが、ある一人の市民が持つ影響度を実感するには微小すぎるのが実情です。

100万人都市を作ることもできるゲームでそこまでこだわっても煩雑なだけというのが実際のところかと思われますが、シムシティでは集団が個人に先立ちます。

対してProject Hospitalでは、雇用できる従業員の最大値は250人で固定されています。

したがって1人あたりの寄与度が大きく、町医者レベルの診療所であれば最低限の設備と医者が1人いれば回していくことが可能です。

診療効率を上げたければ新たに医者を、入院設備を整えるには看護師を、検査を充実させるなら技師を…といった流れで設備とスタッフを増強していくのが基本構造ですが、全ての人材には保有スキルが設定されています。

f:id:wachoke:20190408224826p:plain

24歳には見えない研修医

総合医学スキル45%と診断スキルを19%しか持たない研修医では診断効率も精度もイマイチなので、1日の診療人数も伸びませんし時折誤診で病院の評価がマイナスされるイベントも発生します。

f:id:wachoke:20190408224951p:plain

仙人

それに比べると総合医学スキル99%、診断能力100%に加え、専門分野スキルを持つベテランドクターでは診療効率が段違いですし、診断に悩む難しい症例で「鑑別診断」コマンドを使用できるなど、圧倒的実力を見せつけます。

また、外科医なら手術スキルを持っていないと手術の選択肢が選べませんし、術者はいても麻酔スキルを持つ医者や手術補助スキルを持つ看護師が居なければやはり手術はできません。

レントゲンやMRIを取るにしても、それに対応したスキルを持つ技師を雇う必要があります。

そしてどの職種でも、高い技能を持つ人材は高い給与が必要なので、序盤の金策が苦しい時期にはその部分での取捨選択が要求されます。

夜間帯の人員も最序盤以外は必要になるので、どこにどのレベルの人員を配置するかを考えるのが醍醐味ということになります。

 

②1人1人の診療に介入できる

これが個人的に最もツボに入ったメカニクスです。

例を出しましょう。

f:id:wachoke:20190408231502p:plain

不定愁訴世界代表

嘔吐を訴える患者が来院しました。

最上段には候補となる病名が羅列されていますが、いずれも確度は2%で、診察や検査を追加しないと絞り込めそうにありません。

放っておいてもAIが勝手に診断してくれますが、マニュアルで診療することもできます。

f:id:wachoke:20190408231707p:plain

踊れドクター(触ってるけど)

まずは患者の話を聞き、各種診察を行うこととしました。

これで新しい所見が得られれば、それを手掛かりに追加の検査を行おうという計画です。

f:id:wachoke:20190408231944p:plain

瞬く間に並ぶ所見

…なんと身体診察だけで急性虫垂炎(盲腸)の診断に辿り着きました。

本当はこの後超音波とかCTに進むつもりだったんですが、

f:id:wachoke:20190408232311p:plain

ゴッドハンド

総合医学100%という化け物が100%虫垂炎だと言うのですからこれはもう虫垂炎です。

もし胆嚢や腎臓に石を見つけたり、腹の中にあるはずの無い空気を見つけてしまったとしても虫垂炎です。そういう世界です。

冗談はさておき、このように自ら診療計画を組み立てることが出来る点がこのゲームをただのシミュレーションに堕さしめない特徴だと思います。

今回はたまたまメジャーな疾患でしたが、ライム病、猫ひっかき病、炭疽、肺嚢胞線維症などややマニアックな疾患も幅広く揃っています。

「そんなわけの分からない病気をマニュアルで進められるはずないだろ!」という声が聞こえてきそうですが、病名や検査・治療にマウスオーバーすることで解説ポップが表示されるので、それらをヒントに進めることは十分可能です。

仮に分からなくとも、仕様上診断・治療できない科の患者はやってこないため、可能な検査を全て行えば診断は下ります。

優しい世界。(経営には優しくない)

 

③設備のコピペが優秀

診察室や検査室には最低限必要な設備がそれぞれ設定されています。

PC、診察台、ライト、医療用ごみ箱、手洗い場などなど。

スペースは有限ですのである程度見栄えよく、それでいてコンパクトに配置する必要があるのですが、例えば同じ規格の診察室を複数並べたい場合に一々手動で並べていくのを想像すると、ごく一部のプレイヤーは喜ぶかもしれませんが、まあゾッとします。

このゲームは既存の施設を指定した範囲で簡単にコピペすることが出来るので、連続していくつも同じ施設を並べることができます。

f:id:wachoke:20190408234510j:plain

画面中央の診察室を選択して

これを

f:id:wachoke:20190408234548j:plain

隣にポン

こうじゃ。

設備は備品以外にも床のデザインや壁の模様までデザインできるのですが、このコピペ機能ではそれらも一式丸ごと写してくれるので、診療科ごとに色分けしている場合でも毎回塗りなおすといった作業は不要です。

もちろん選択範囲を狭めて、病室のベッドだけ増やすということも可能。

「最初から診察室設計するのよく分かんないし面倒なんだけど…」という人のためにも、最初からお洒落な診察室や待合室といったセットが登録されていますので、効率を追求しないならこのセットを並べるだけでかなり素敵な病院にできると思われます。

 

総評

シムシティに似たゲームデザインでありながら、個人レベルの存在感が大きく、プレイヤーが直接診療することで超本格的お医者さんごっこができ、UIも優秀という部分が大きな推薦ポイントです。

細かく言えば麻酔科医や手術の流れが細かく描写されている(グロくはない)、医療用ゴミ箱のデザインがリアル、経営のために職員のホスピタリティを真っ先に削る自分に気づいてヘコむ、職員が必ず定時で帰宅するので拡張型心筋症で死にそうな患者が歩いて帰宅するなど様々な点で推したい(ツッコミたい)部分はありますが、書いている人の主観が多分に混入するため今回は選外となりました。

現在steamで2570円。

安いと感じるか高いと感じるかは人それぞれですが、シミュレーションゲームと、業務のフロー改善のような内政要素が好きな人には強くお勧めできる作品かと思います。

備品の設置関連がやや分かりにくいので躓く点もそこそこあるのですが、需要があればそちらの解説記事も別途書きます。

この記事を読んだ方の積みゲーが1つ増えれば望外の喜びです。

ご高配のほどよろしくお願い申し上げます。

ピーターラビット(映画)

www.peterrabbit-movie.jp

 

まず最初に誤解を解いておきたいのですが。

この映画はアクション映画です。

 

ピーターラビットといえば、お皿とかポットとかカレンダーとか、それらにプリントされた柔らかなタッチのウサギ達という印象である方が多いと思われます。

f:id:wachoke:20180701215041j:plain

こういうの。(Wikipediaより)

そのピーターラビットが実写化されるということで、何をやってしまったんだというのが最初に聞いた時の感想でした。

あの独特の柔らかそうな質感がピーターラビットのウリだと思っていたので、それを捨て去ってTEDのような動くぬいぐるみ映画にしてしまえば魅力が損なわれると思いましたし、どうせ動物映画なんてお涙頂戴感動映画と相場が決まっています。(偏見。TEDを挙げておきながら。)

正直あまり興味も無かったので、普段なら見に行かないこと請け合いなのですが、TwitterのTL上では想定外の感想が散見されました。

 

・畜生 vs 悪

仁義なき戦い

・火薬の使用量が動物映画史上最高

 

動物映画…動物映画?

あのほんわかイラストが、実写化されただけで火薬飛び交う戦場になる?

これらの謳い文句が気になっていたところに誘われたので、本日見に行くこととなり、大変面白かった(笑い転げるという意味で)ため一年ぶりに記事を書いている次第です。

私の感想を箇条書きにすると、

・ウサギ(ズートピア追放)

ホームアローン(攻城戦)

・怒涛のテンポで襲い掛かる見どころと笑いどころと時々シリアス

・概ね北斗の拳

といった感じです。

細かく紹介してみましょう。

 

1.あらすじ(ややネタバレ気味)

主人公のピーターは行動力のある若いウサギ。ウサギ嫌いのマクレガー老人が所有する畑に時折家族と協力して忍び込み、野菜を失敬しては追われる日々の様子。捕まってあわやウサギパイという事態もありますが、マクレガーの隣人であるウサギ好きのビアという女性に助けられことなきを得ます。

ある日老人は不摂生がたたり死亡(映画内の描写がこれ)。彼の親戚であるトーマスという若い男がロンドンから引っ越してきます。

潔癖症でやや変人気質のトーマスですが、徐々にビアとの交流を深めていき、それが畑のことも相まってピーターの心を刺激し、ウサギ vs ヒトの戦争が勃発、エスカレートしていきます。

一連の流れの中で、ピーターが暴発させたダイナマイトがウサギの住処もろともビアの家屋を破壊。これをトーマスによるものと勘違いしたビアは激怒し、引っ越しを決意します。

自らの行いがビアに甚大な被害を与え、かつその罪をトーマスに押し付けた格好になり、結果としてビアがいなくなってしまう事態に際してピーターも(多少)反省。

一時的にロンドンへ戻っていたトーマスを、ロンドンまで追いかけて何とか和解して協力を仰ぎます。

果たして1人と1匹はビアを説得し、平穏な生活を取り戻すことができるのか?(ネタバレ:できる)

 

2.個人的な見どころ

2-1.ピーター達がずる賢い

物語はまず、マクレガー老人の畑に各種野菜を盗み出すためにピーター達が侵入するところから始まるのですが、侵入役はピーター、見張り役に妹3匹、投げ出したブツの受け取りに従弟と、役割分担がプロの傭兵団です。

全体を通してこの映画に出てくる動物達は、動物の皮を被った人間とでもいうべきキャラの立ち方をしています。喋るし、物を掴むし、ダーツをするし、簡単な電気系統の配線までやってのけます。感想の箇条書きで「ホームアローン」と書きましたが、野菜をパチンコでぶち当てる、鍬やウサギバサミを敷き詰めてトラップにするなど、あらゆる道具を小さな体で駆使して対抗していく様子はかなり近いものがあると感じます。

ピーター達はその中でも発想力と行動力がほとんど人間と言えるレベルなのですが、見た目や四つ足歩行は本物のウサギなので、その可愛さとのギャップがまたずる賢い。あざとい。

ちなみにずる賢さの代名詞であるキツネも出てくるには出てきますが、ちょっと毛をバリカンで刈られるくらいしか出番がありません。刈ってるのウサギだし。

 

2-2.随所のコメディ描写が秀逸

これはもう挙げていくとキリがないのですが、そもそもマクレガー老人の死因が不摂生であるというチョイスとその描写が笑いどころなのと、越してきたトーマスがドア枠を掃除するのに手と尻で雑巾がけしたり、ちょいちょい出てくるスズメ四羽組がミュージカル調に歌うたびに妨害されるお約束があったり、ウサギ3姉妹の末っ子(多分)がマサイの戦士めいていたり。説明しきれませんし、実際に見ないと伝わらない面白さが随所にあふれています。

この映画はアクション映画だ、と最初に述べましたが、雰囲気としては8割がコメディで、シリアスは3か所くらいちょこっとある程度です。

コメディにはメタ発言めいたものもあります。

トーマスはブラックベリーが体質的に無理という事実が判明した際に、ピーターがそれを利用する案を提示するのですが、その後カメラ目線で「真似しちゃ駄目だよ、電話とかしないでね」とウィンクするシーンがあります。

デッドプールが同時期にやってることへのオマージュなのかもしれません。

ちなみに、実際にトーマスの口へブラックベリーが放り込まれた時には、彼は慌ててエピネフリン注射薬を太ももに突き刺し、一瞬白目を剥いて昏倒するシーンがあります。

この点に関して「アレルギーの恐ろしさを軽く扱った」という物言いがついたとのことで、制作会社が謝罪する事態になったそうです。

個人的な見解としては「ピーターの発言が軽い」ものの、映画全体の構成としては「(危ないのは分かってるけど映画だから)電話とかしないでね」「アナフィラキシーを起こしたトーマスの描写が鬼気迫る」といった点で、むしろアレルギーの危険性を念押しするようにも思えます。

とはいえ、小学生がコメディの雰囲気でこのシーンを見た場合に「試しにやってみようぜ!」となるリスクはあまり低くないなとも思うので、アレルギーのくだりはあえて映画内には盛り込まず、(もし意図があったとすれば)教育的な内容はそれ専門の媒体に委ねた方が無難だったなとも考えます。

真面目な話おしまい。

 

2-2-3.千葉繁が濃い

これが言いたくてこの文章を書き始めたところがあります。

千葉繁というと、回を追うごとにテンションが上がっていく北斗の拳次回予告が有名です。

www.nicovideo.jp

(最後まで見た後に2-3分冒頭からリピートを推奨します)

ピーターラビットにおける千葉繁の出番は、日付が変わった描写としての雄鶏です。この雄鶏の存在は物語の主軸に全くというほど関係ないので実質アイキャッチのようなものなのですが、演技の迫力(北斗の拳最終回レベル)のせいで凄まじい存在感があります。たかがアイキャッチもどきに一回あたり30秒近い尺が割かれているので、元の英語版でも結構な演技がなされていると思うのですが、もう千葉繁しか考えられない。この映画の面白かった点を円グラフで割り振るなら、2割は千葉繁が持っていく。それほどのものです。

ただ、これは上記の北斗の拳動画を見たことがあるから評価が水増しされているので、一般的な評点としてはもう少し下がると思います。劇場内でも全体的に笑いが起こるシーンだったので、知らない人でも持っていかれる度は高いのは間違いないのですが。

 

2-3.アクションが(割と)ハイクオリティ

 映画内ではピーター達の素早い立ち回り、トーマスに掴まれたピーターの反撃、感電して吹っ飛ぶトーマスなど、動きの大きいシーンが結構あるのですが、特にピーターのすばしっこさが際立つような描写になっています。

両耳掴まれて宙ぶらりんの状態から殴る蹴るの暴行を叩き込むシーン、かなり流麗な動きでトーマスの顔面を連打して脱出してるのですが、あれ役者のリアクションどうなってるんだろうとつい考えてしまいます。

合成のはずのピーターの、素早い連撃に対する顔の動きや体の振りが全く違和感ありません。そのため、ピーターの存在がかなり自然に物語内の現実に溶け込んでいます。

暴力表現が自然すぎて存在感があるウサギというのもどうなんだろう、という気持ちもちょっとします。

 

3.総括

本作はコメディアクション動物映画として極めて高いレベルに纏まった作品だと感じます。現状、今年見た映画で一番面白いです。

コメディ表現の粒の細かさとテンポの良さ。CGのはずなのにリアル度の高いウサギと、役者との共存の自然さ。動きの派手さとそれを際立たせるカメラワーク。そして突然の千葉繁

以上を一つの言葉に成型して、この文章の締めとします。

 

北斗の拳(ウサギ味)

 

ありがとうございました。

ぐらんぶる

 

 漫画の紹介となるとこれまでの裏モットーであった「多少賢そうな文章を書けるようになるための訓練」からやや外れてしまうのですが、あんまり笑った漫画なので紹介します。

結論から言うと、成人してから読んだ漫画で一番腹筋に来ました。

 

あらすじはこうです。

大学進学を期に叔父の家へ居候することになった北原伊織(♂)が、叔父の経営するダイビングショップ「grand blue」に案内されたところ、進学先のダイビングサークルが開催する地獄のような飲み会に巻き込まれたところから始まります。

地獄のような、とはこの場合、筋骨隆々の男たちが9割5分裸の状態で野球拳を行いつつ、度数の高い酒をばらまいている状況です。

バラ色の大学生活を夢見ていた伊織は残念なことに鮮烈な大学デビューを飾ることとなります。全裸で飲み会したり、従姉妹と交流したり、全裸で飲み会したり、稀にダイビングの練習をしながら、一般的なクズ学生としての道を進んでいきます。

 

とまあこれだけ書くとどこが腹筋に来るのかサッパリ分からないことと思います。

この漫画の腹筋ポイントは、ページ捲り後の顔芸にあります。

上記Amazonの表紙では綺麗な女性をメインに据えていかにも楽しげな大学サークルの飲み会といった風ですが、これを1枚めくると全裸の男が酒を浴びているシーンが隠れています。

そして、これが重要ですが、顔つきが超兄貴アドン・サムソンとかその方向です。

「!?」が入った瞬間のGTO小山田教頭テイストも時折見られます。

涼風を彷彿とさせる美麗イラストと超兄貴とのギャップ、それに至るまでの流れが本作品のキモと言えるでしょう。

 

1か所だけ、訴えられなさそうな範囲で内容を参照します。

女子大での学祭に入れるチケットを巡って、血で血を洗う醜い争いを繰り広げる伊織達馬鹿4名を見かねて、従姉から「友達と喧嘩なんて良くないよ!」という制止が入ります。

それに対する彼らの返答は「そうだ、確かに友人とはそういうものだ」「ありがとう、おかげで目が覚めた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ今から友達やめるぞ」

「短い付き合いだったなクソ野郎ども」

 

という般若の表情でのバトルロイヤルでした。(般若は女性ですが)

 

終始このノリで進んでいくので、アホな男のテンションが苦手だと辛いものがあるかと思われます。

が、刺さる人の感性には深く突き刺さって忘れられない作品になるのではないかとも感じています。

とりあえずお試し版か、電子版で一冊買ってみてはおいかが?

「最悪」の医療の歴史

 

「最悪」の医療の歴史

「最悪」の医療の歴史

 

 

古くはバビロニアから、新しきは中世にかけて、医療という名目で何が行われてきたのかを拾い集めたエピソード集です。

今の常識からすると「何故そんなことを…」と突っ込みたくなる事例が満載ですが、当時の人々は大真面目だったものと思われます。

後半、17世紀くらいまで近くなってもまだ凄まじい案件が出てくると、「これは当時の主流じゃ無かったんだよな…?」という祈りにも似た気持ちが湧いてきます。

以下にいくつか紹介します。

 

バビロニアでは、病は患者のこれまでの行いが悪霊や呪いといった形で表れるものと考えられており、医者とシャーマンはほとんど同義であった。治療法は呪文を唱えたり薬草を混ぜる他、豚の糞を首に巻いたりヒト頭蓋骨にキスをするといったものがあった。

 

古代ギリシアでは痔と精神の関係があると思われており、特に失恋や鬱病の治療を目的として痔の切開が行われていた。やり方は押さえつけて熱した鉄片で焼く。

 

古代ローマでは歯痛に対してネズミの死骸を口に突っ込んだり、カバの歯をこすりつけたりしていた。

 

・七世紀頃、恋の病を治療するために、男の口に愛する女性の経血を含んだ布きれを押し込んだ。

 

瀉血ルネッサンス期頃には最高の医療の一つと認識されており、イングランド王チャールズ2世は1040ccの血液を抜かれ、熱した鉄棒で突かれたり鳩の糞を塗られるなどして数日後死亡。

 

・16世紀頃のドイツなどでは、ヒトの死体を用いて薬にすることは最先端であり、死体の需要は高かった。真っ先に新鮮な死体に触れられる死刑執行人は人気が高く、国家資格として試験も課されていた。また、処刑や解剖はショーとしての側面も強く、観客の集まりはすこぶる良かった。

 

 

読んでいて中々ゾッとする本です。

よくぞ現在の水準まで進歩したなと思いました。

今の医療は個人レベルの医師の経験ではなく、より広い視野で症例を集め、統計的に有効かそうでないかを判断するEBM(Evidence Based Medicine)に根ざしていますから、なかなかこれらに匹敵する代物がまかり通ることは無い、はず。

 

ちなみに読んでいて一番笑ったのはこちらです。

 

・武器軟膏

17世紀、決闘などで生じた武器による外傷に用いられたもの。

原材料は絞首刑に処されて間もない泥棒の頭蓋骨に生えた苔。

これを、「傷を作った武器」に塗る。勘違いしてはいけない。傷に塗るのではない。武器に塗る。

 

読んでて「何でそっちやねん」て吹き出しました。事実は小説より奇なりとはよくぞ言ったものです。こんなもの、現代人の想像の域を超えています。

ちなみにこの話には続きがありまして、「お前が斬った敵を助けるために武器を貸してくれ!」と持ちかけるのは図々しいし無理があると考えた当時の医者は、「木製のレプリカでも良かろう」と妥協したそうです。

どっとおはらい。

 

人類、案外馬鹿なんだなと疲れた笑いが欲しい時においかが?

ルワンダ中央銀行総裁日記

 

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

 

 

Twitterでオススメされ、しばらく積んでいた本。

 

 日銀を経て国際通貨基金に勤めていた著者の服部氏が、アフリカはルワンダ中央銀行総裁として赴任した1960年代について綴った一冊です。

日本で暮らしており、経済の素養がほぼ皆無な私のような人間にとって、中央銀行とは「金利の数字を0近く(悲しい)で微調整している大きな銀行」という程度の認識ですが、それは日本の経済が(ルワンダに比べれば)まともに回っている証左なのかもしれません。

 

著者赴任時点でのルワンダの経済状況たるや、ちょっと想像しがたいものがあります。

政府の総資産のうち、半分は回収不能な債権です。それは資産なのか?と訊きたくなります。

国内消費目的でなく、外貨獲得のための主要産業はコーヒー豆ですが、内陸国の悲哀として海が遠く、1800kmの陸路輸送コストがかかるハンデを抱えており、それでいてコーヒー豆は世界的に供給過多で値は低く、今後の値下がりも懸念されます。

政府が発行する国債の利率について明確な決まりはなく、その時々の気分によって1ポイント以上増減します。

ベルギーの植民地から独立した関係で、国内にはベルギー系を中心に外国企業がありますが、彼らは元宗主国や本国の存在感を利用して税率などの点で特権的な地位を築いています。

 

さあこの状況からルワンダの財政を建て直しましょう!

まずは総裁お抱えの運転手がお釣りを誤魔化すところからです!

職員は日中お喋りに興じ、専ら派閥争いが好きなようです!

こちら今日の日報ですので目を通しておくとよいでしょう、日付は1週間前ですが!

ちなみに中央銀行の副総裁は辞意を表明しておりますぞ!

 

 

 

端的に言って、想像の埒外でした。

この惨状を相手に著者が固めた心意気を引用させていただきます。

”なるほど中央銀行の現状は想像を絶するくらい悪い。しかしこれは逆に見れば、これ以上悪くなることは不可能であるということではないか。そうすると私がなにをやってもそれは必ず改善になるはずである。”

骨太の精神力から成される各種の金融政策については、逐一文字数を割いて狙いと理由が説明されており、読み応えも十分です。経済の知識があった方が深いところまで理解できたかもしれませんが、理系の私が多少読み飛ばしても楽しめました。

 

本書の前半分以上は施行した金融政策に費やされており、その成果については終盤に準備段階に比べて半分程度の頁数しかありません。

逆にその構成が、丹念に敷き詰められた計画が一気に転がり出す爽快感にも繋がっています。

特に、見開きで示されている経済収支の推移表については、わずか五年で貿易総額が3倍になっている事実に瞠目せざるをえません。

 

服部氏は言わずもがな日本人ですが、ルワンダのためを最優先としてあらゆる困難を解決していきます。

ただ経済を発展させるためだけでなく、その繁栄が持続し、かつルワンダ人自身の手によってなされるように心を砕く様は現地の人々も、読者の心も打ちます。

 

全体的に淡々と進んでいく本書ですが、読み終えるとコツコツ仕事することの偉大さに触れることが出来ます。

仕事熱心ではないけれど、適度なモチベーションも足りない時などにおいかが?

【ロマサガ2】やる夫が水銀燈に帝位を継承させるようです

gnusoku.blog41.fc2.com

ロマサガ全然知らないんですが、面白くて一気読みしました。

ようこそ夜のない世界へ。

 

あまり文学のなんたるかは知らないのですが、やっぱり登場人物の心理をどれだけ必要十分に描写するかという点は大事だと思います。

その点、本作品では各人物の抱える譲れない信念とそれに付随する思惑、行動、それらのすれ違いや対立が描かれていて、「あー、そうなっちゃうかー…」てな気持ちでずっと読んでおりました。

 

FFのラスボスというと古くは皇帝がお決まりでしたが、あの人間離れした強さの背景に伝承法とか考えると少し楽しくなれますね。

 

やる夫系としては中程度の長さと思いますので、お時間ある時においかが?